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「このままでいいのかな?」
40代、50代になって、ふとそんなことを考えたことはありませんか?

仕事では、それなりの経験を積んできた。
新人だった頃は、目の前の仕事を覚えることで精一杯だったけれど、今では後輩や部下を指導する立場になり、責任のある仕事も任されるようになった。

周囲から見れば、キャリアも順調なのかもしれません。

けれど、仕事を終えて一人になったとき、ふと考える。
「私は、この先どうしたいんだろう?」
「今の仕事を、このまま続けていくのだろうか?」
「これまで頑張ってきたけれど、10年後の私は何をしているのだろう?」

そんな問いが、頭をよぎることがあります。

今の仕事が嫌なわけではない。転職したいわけでもない。大きな不満があるわけでもない。
それなのに、なぜか心のどこかに「何かが違う」という感覚がある。

40代、50代は、そんな人生の変化を感じやすい時期なのかもしれません。

そんなときに出会ったのが、ジョセフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』でした。

一見すると、神話について書かれた難しい本です。
けれど、「英雄の旅」という考え方を自分の人生に重ねてみると、意外なほど身近に感じられます。

もしかすると、人生の転機とは「これまでの人生が間違っていた」というサインではないのかもしれません。
これまでの自分を持ったまま、次の旅へ進むタイミングなのかもしれない。

今回は、『千の顔を持つ英雄』を40代・50代の女性という視点から読み解いてみたいと思います。

『千の顔を持つ英雄』とはどんな本?

『千の顔を持つ英雄』は、アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルによって書かれた著作です。

キャンベルは、世界各地の神話や英雄物語を比較し、そこには似たような物語のパターンが存在すると考えました。

その中心となる考え方が、「英雄の旅」です。

英雄は、最初から特別な存在として完成しているわけではありません。
慣れ親しんだ日常の世界から旅立ち、未知の世界へ入り、さまざまな試練に直面します。
そして、その経験を通して変化し、最後には何かを持って元の世界へ戻ってきます。

大きく捉えると、
出発 → 試練・変化 → 帰還
という流れです。

映画や小説などで、主人公が冒険へ旅立ち、困難を乗り越え、最後には以前とは違う人物になって戻ってくる。
そんな物語を思い浮かべると、分かりやすいかもしれません。

でも、この「英雄の旅」は、物語の主人公だけのものなのでしょうか?

私は、40代・50代の私たちの人生にも、同じような瞬間があるのではないかと思います。

英雄の旅は、人生の転機にも似ている

人生には、突然「今まで通りではいかない」と感じる時があります。

たとえば、

  • 長く勤めてきた会社で役職が変わった
  • 管理職になった
  • 今までの専門性だけでは対応できない仕事が増えた
  • 転職を考えるようになった
  • 独立や副業を考えるようになった
  • 親のことを考えるようになった
  • 自分の老後について考えるようになった
  • 仕事以外の人生について考えるようになった

など。

あるいは、もっと小さな変化かもしれません。

  • 今まで楽しかった仕事に、少し物足りなさを感じる
  • 以前なら気にならなかったことが、気になるようになる
  • 周囲から評価されても、なぜか嬉しくない
  • 「もっと違うことをしてみたい」という気持ちが出てくる

こうした変化は、ときに「自分がおかしくなったのかな」と感じさせます。

でも、そうではないのかもしれません。

これまでの人生から、次のステージへ移る準備が始まった。
そう考えることもできます。

40代・50代は「次の旅」を考える時期

20代や30代の頃は、人生の目標が比較的分かりやすかったのではないでしょうか。

「仕事を覚えたい」
「一人前になりたい」
「昇進したい」
「収入を増やしたい」
「専門性を身につけたい」

そんな目標に向かって、一生懸命走る。
もちろん、人によって目標は違います。

でも、40代、50代になると、少しずつ問いが変わってきます。

「何を手に入れるか」だけではなく、
「私は、どう生きたいのか?」
を考えるようになるからです。

「キャリアが順調なのに、なぜか不安」の正体

40代・50代のキャリアについて考えるとき、少し難しいのがこの問題です。

「仕事が嫌だから辞めたい」というわけではない。
むしろ、仕事は好き。
会社にも大きな不満はない。
それなりに評価もされている。

でも、
「このままでいいのかな」
と思ってしまう。

これは、とても厄介な感覚です。

明確な問題がないので、誰かに相談しても、
「順調じゃない」
「せっかくここまで頑張ったんだから」
「今さら変える必要はない」
と言われるかもしれません。

自分でも、
「贅沢な悩みなのかな」
と思ってしまう。

けれど、「不満がないこと」と「満足していること」は、同じではありません。

これまでの目標を達成したからこそ、次の問いが生まれることがあります。

たとえば、20代の頃から目指していたポジションに就いた。
欲しかった仕事を任されるようになった。
収入も安定した。
周囲からも認められている。

それなのに、心の中で、
「じゃあ、この先は?」
という問いが残る。

それは、これまでの人生が失敗だったということではありません。
次に大切にしたいものが変わってきた。
ただ、それだけなのかもしれません。

人生の転機は「失うこと」ではない

人生の転機という言葉を聞くと、何かを大きく変えなければいけないように感じます。

  • 転職する
  • 会社を辞める
  • 引っ越す
  • 独立する
  • 新しいことを始める

もちろん、それも選択肢の一つです。

でも、必ずしも大きな変化である必要はありません。
同じ会社にいても、仕事への向き合い方を変えることはできます。

  • これまで自分が成果を出すことを優先していた人が、後輩を育てることに力を注ぐ
  • 一つの専門分野をさらに深く掘り下げる
  • 今まで身につけた経験を、誰かに伝える
  • 仕事とは別に、自分が大切にできる時間をつくる
  • 新しい学びを始める
  • 小さな副業を始めてみる
  • 地域や社会との関わりを持つ

そう考えると、「次の旅」は必ずしも今いる場所を捨てることではありません。

今までの自分に、新しい何かを加えること。

それもまた、新しい旅の始まりです。

40代・50代の人生で考えたい5つの問い

『千の顔を持つ英雄』を読んで、もし自分の人生を「旅」として考えてみるなら、こんな問いを持ってみたいと思います。

1.今の私は、本当に「今の人生」を選んでいるだろうか?

「昔からこうしてきたから」
「みんながそうしているから」
「今さら変えるのは難しいから」

そんな理由で、今の生活を選んでいないでしょうか。

もちろん、現状を維持することも立派な選択です。

大切なのは、
「私はこれを選んでいる」
と、自分で言えること。

誰かに決められた人生ではなく、自分が選んだ人生なのか。
一度立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。

▶ アクション:紙に書き出してみる
「今の生活を選んでいる理由」を、正直に書き出してみてください。
「自分で選んだ」と言える項目と、「流れで決まった」項目が見えてくるはずです。


2.「失うのが怖い」という理由だけで、変化を避けていないだろうか?

40代・50代になると、失うものが増えてきます。

  • これまで築いてきたキャリア
  • 会社での立場
  • 収入
  • 人間関係
  • 生活の安定

だからこそ、新しいことを始めるのが怖くなる。
「今より悪くなったらどうしよう」
という気持ちは当然です。

だから、無理に大きな決断をする必要はありません。
ただ、

「怖いからやらない」のか、「考えたうえでやらない」のか。

そこは分けて考えてみたいところです。


▶ アクション:「怖い」を具体的に書き出してみる

紙を一枚用意して、以下の2列で書き出してみてください。

左側:失うのが怖いもの右側:得られるかもしれないもの
例:今のポジション例:新しいやりがい
例:安定した収入例:自由な時間
例:同僚との関係例:新しい出会い

書き出してみると、「本当に失いたくないもの」と、「実は手放しても大丈夫なもの」が見えてくるはずです。

「怖いからやらない」のではなく、「これを失うのは嫌だから、この道を選ばない」と自分で選んでいる。

そう気づくだけで、気持ちの持ち方が変わります。

3.これまでのキャリアを、別の場所で生かすとしたら何ができるだろう?

40代・50代の大きな強みは、「経験」です。
20代の頃にはできなかったことが、今ならできる。

  • 人との交渉
  • 問題解決
  • 部下の育成
  • プロジェクトの管理
  • 専門知識
  • 失敗から学んだこと

誰かにとっては、その経験そのものが価値になるかもしれません。

「新しいことを始める」と聞くと、何か新しいスキルをゼロから身につけなければいけないように思います。

でも、本当に必要なのは、

これまでの経験を別の角度から使うこと

なのかもしれません。


▶ アクション:「できることリスト」を作ってみる

以下の3つを、それぞれ5つずつ書き出してみてください。

  1. 仕事で身につけたスキル
    (例:資料作成、プレゼン、交渉、マネジメントなど)
  2. 人から感謝されたこと
    (例:「教えてくれて助かった」「あなたの話で元気が出た」など)
  3. 失敗から学んだこと
    (例:「早めに相談すればよかった」「完璧を目指しすぎた」など)

書き出したものを眺めていると、「これ、他の場所でも生かせそう」という発見があるはずです。

4.仕事以外で、自分が大切にしたいものは何だろう?

キャリアを大切にしてきた人ほど、仕事以外の自分について考える時間が少ないことがあります。
「仕事をしている自分」が、自分自身そのものになっている。
でも、人生は仕事だけではありません。

  • 好きなこと
  • 学びたいこと
  • 誰かとの時間
  • 一人で過ごす時間
  • 旅
  • 本
  • 自然
  • 創作
  • 健康
  • 社会とのつながり

40代・50代からは、
「仕事で何者になるか」だけではなく、「仕事以外で何を感じたいか」
についても考えてみたい。

それは、キャリアを諦めることではありません。

人生を仕事だけに預けない、ということです。


▶ アクション:「ワクワクリスト」を作ってみる

以下の質問に、正直に答えてみてください。

  1. 最後に「楽しい!」と感じたのは、いつ?何をしていたとき?
  2. 子どもの頃、夢中になってやっていたことは?
  3. お金や時間を気にしなかったら、何をしてみたい?
  4. 誰といるときが、一番落ち着く?
  5. 一人のとき、何をしていると時間があっという間に過ぎる?

答えに正解はありません。

「仕事以外で、自分が大切にしたいもの」が見えてくるはずです。

5.10年後の自分が、今の自分を見たら何と言うだろう?

最後に、一つ想像してみてください。
今から10年後。
60代になった自分が、今の自分を見ています。

そのとき、
「もっと挑戦しておけばよかった」と思うでしょうか。

それとも、
「今の選択でよかった」と思うでしょうか。

どちらが正解ということではありません。
未来の自分がどう思うかは、誰にも分かりません。

ただ、今の自分が何を恐れ、何を大切にし、何を選ぼうとしているのか。
それを考えるきっかけにはなります。


▶ アクション:「未来の自分」に手紙を書いてみる

以下の構成で、60代の自分から今の自分へ手紙を書いてみてください。


件名:今のあなたへ

拝啓

今のあなたへ。
60代の私から、一言伝えたいことがあります。
(ここに、未来の自分が今の自分にかけてあげたい言葉を書く)

例えば…

  • 「その選択、正解だよ」
  • 「もっと早く始めてもよかったね」
  • 「よく頑張ったね。もう少し休んでもいいんだよ」
  • 「その道、私も歩いてきたよ」

敬具


書き終わったら、一度声に出して読んでみてください。
未来の自分が、今の自分に何を伝えたいのか。
それが、今の選択のヒントになるかもしれません。

5つの問いをまとめる

これら5つの問いは、すぐに答えを出す必要はありません。
むしろ、
「問いを持ち続けること」そのものが、次の旅への第一歩
なのだと思います。

  • 今の人生を、自分が選んでいるか
  • 怖いからやらないのか、考えてやらないのか
  • これまでの経験を、どう生かせるか
  • 仕事以外で、何を大切にしたいか
  • 10年後の自分は、何と言うか

これらの問いを、ときどき思い出してみてください。
あなたの「次の旅」は、もう始まっているのかもしれません。

「英雄」は特別な人ではない

『千の顔を持つ英雄』というタイトルを見ると、「英雄」という言葉に少し距離を感じるかもしれません。
私も最初はそうでした。

英雄というと、特別な才能を持った人や、大きなことを成し遂げた人を想像します。

でも、「英雄の旅」という視点で考えると、もっと身近なものに見えてきます。

  • 慣れ親しんだ場所から一歩踏み出す
  • 不安になりながらも、新しい経験をする
  • 失敗する
  • 悩む
  • 迷う
  • それでも進む
  • そして、その経験を経て、少し違う自分になる

そう考えれば、英雄の旅は、誰か特別な人だけの物語ではありません。

私たち一人ひとりの人生にも、似たような瞬間があります。

  • 転職をする人もいる
  • しない人もいる
  • 独立する人もいる
  • 今の会社で新しい役割に挑戦する人もいる
  • 大きな決断をする人もいれば、小さな一歩を踏み出す人もいる

大切なのは、どちらが正しいかではありません。
自分にとって、今どんな旅が始まろうとしているのか。
そこに目を向けることなのだと思います。

人生の後半戦は、「新しい旅」の始まりかもしれない

40代、50代になると、人生はもう折り返し地点を過ぎたように感じることがあります。

「もう若くない」
「今さら遅い」
「これまで築いたものを変えるのは怖い」

そんな気持ちになることもあるでしょう。

でも、これまでの人生を振り返ってみると、40代・50代だからこそ持っているものがあります。

  • 経験がある
  • 失敗がある
  • 人とのつながりがある
  • 自分の得意なことも、苦手なことも、以前より分かっている
  • 若い頃には分からなかった「自分にとって大切なもの」も、少しずつ見えてくる

だから、人生の後半戦は、何もかもゼロから始める旅ではありません。

これまでの自分を連れて、新しい場所へ向かう旅。

そんなふうに考えてもいいのではないでしょうか。

あとがき

これまで頑張ってきた人ほど、「これから何をするか」を考えることに戸惑うものです。

目の前の仕事に一生懸命取り組んできたからこそ、立ち止まることに罪悪感を覚えることもあります。

でも、立ち止まることは、後退することではありません。

これまで歩いてきた道を振り返り、これから進みたい方向を考えるための時間でもあります。

もしあなたが今、人生のどこかで「小さな違和感」を感じているなら、それを大切にしてみてください。

それは、何かを壊すためのサインではなく、
これからの自分を考えるためのサイン
なのかもしれません。

あなたの「次の旅」は、もう始まっているのかもしれません。

▶ 次の一歩:5つの問いから、一つ選んで考えてみる
記事の中で紹介した「5つの問い」から、一番気になるものを一つ選んで、紙に書き出してみてください。
それだけで、次の旅への第一歩になります。

次回は、『神話の力』を「私は、何を大切にして生きるのか?」という切り口で紹介します。

『千の顔を持つ英雄』『神話の力』『すばらしい新世界』を40代・50代で読む意味|自分の人生を考える3冊
40代・50代が読むべき3冊|『千の顔を持つ英雄』『神話の力』『すばらしい新世界』が教える人生の問い40代・50代が読むべき3冊|『千の顔を持つ英雄』『神話の力』『すばらしい新世界』が教える人生の問い。自分の人生をもう一度選び直すためのヒント。シリーズ完結編。...

参考文献

ジョーゼフ・キャンベル 著

千の顔をもつ英雄〔新訳版〕 上 (ハヤカワ文庫NF)
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千の顔をもつ英雄〔新訳版〕 下 (ハヤカワ文庫NF)
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では、またね~