シルスプのブログにようこそ
前回、『ウォール街のランダム・ウォーカー』が教える心穏やかな投資について書きました。
記事を公開した後、こんな質問をいただきました。
「インデックス投資が良いのは分かった。でも、具体的に株式と債券をどんな比率で持てばいいの?」
「40代と50代で配分を変えるべき?」
「一度決めたら、そのままでいいの?」
今日は、これらの疑問にすべて答えます。
バートン・マルキールが『ウォール街のランダム・ウォーカー』で
提示している「ライフサイクル投資術」の具体的な資産配分を、
実践的な計算シートとともに解説します。
この記事を読めば、今日から自分に最適なポートフォリオを組めるようになります。
マルキールの戦略の根幹は、
「リスクを取れる能力は、残された時間に比例する」
という考え方です。
20代なら、暴落しても回復を待つ時間が十分にあります。
しかし、リタイアが迫る50代以降は、大きな資産の目減りが生活基盤を
揺るがす致命傷になりかねません。
そこで本書が推奨するのが、年齢を重ねるごとにリスク資産(株式)の割合を減らし、
安定資産(債券)の割合を増やしていく「ライフサイクル投資術」です。
投資は「動的なプロジェクト」である
重要なのは、投資は「一度決めて終わり」ではないということです。
自分のライフステージという変化する現実に合わせて、
ポートフォリオを動的に調整していくプロジェクトなのです。
マルキールが示す基本的な考え方:
株式比率 = 110 – 年齢
例:
- 40歳:110 – 40 = 70%(株式)
- 50歳:110 – 50 = 60%(株式)
- 60歳:110 – 60 = 50%(株式)
この簡易式を基本に、個人の状況に応じて調整します。
40代の資産配分モデル──株式65%の攻めと守りのバランス
働き盛りで収入も安定している40代は、
まだ長期的な視点でリスクを取れる時期です。
マルキールが提示する標準的な配分は、株式を約65%に据える構成です。
【40代の資産配分モデル】
| アセットクラス | 配分比率 | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 株式 (国内・海外) | 65% | 成長のエンジン | eMAXIS Slim 全世界株式 |
| 債券 | 20% | 暴落時の下落を 抑える | eMAXIS Slim 国内債券インデックス |
| 不動産(REIT) | 10% | インフレ対策 | ニッセイ J-REITインデックスファンド |
| 現金・キャッシュ | 5% | 機動的な予備資金 | 銀行預金、MRF |
なぜこの配分なのか?
株式65%:
まだ15〜20年の運用期間があるため、世界経済の成長を取りに行く
債券20%:
暴落時のクッション。株式が30%下落しても、全体では約20%の下落に抑えられる
REIT 10%:
株式・債券とは異なる値動きで分散効果を高める
現金5%:
急な出費や絶好の買い場に対応できる機動力
ビジネスでも「選択と集中」が重要ですが、投資においては「分散」が最大の武器。
40代は、この65%の株式を世界中に散らして、世界経済の成長を確実に取りに行くフェーズです。
50代の資産配分モデル──守りを固める債券35%
50代に入ると、運用期間の短縮とともに「守り」の意識を強める必要があります。
マルキールが推奨するのは、株式の比率を50〜55%程度まで落とし、
債券を30%以上に増やすモデルです。
【50代の資産配分モデル】
| アセットクラス | 配分比率 | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 株式 (国内・海外) | 50% | 限定的な成長 | eMAXIS Slim 全世界株式 |
| 債券 | 35% | 安定性の確保 | eMAXIS Slim 国内債券インデックス |
| 不動産(REIT) | 10% | インフレ対策 | ニッセイ J-REITインデックスファンド |
| 現金・キャッシュ | 5% | 機動的な予備資金 | 銀行預金、MRF |
なぜ50%まで下げるのか
それは、リタイア直前に市場の暴落に直面しても、
資産の半分が安定した債券やキャッシュであれば、
精神的なパニックを防ぎ、生活水準を維持できるからです。
具体例: 総資産1,000万円の場合
- 株式50%(500万円)が30%下落 → 350万円(-150万円)
- 債券35%(350万円)は変動なし
- REIT・現金15%(150万円)は小幅変動
- 全体では約15%の下落に抑えられる
40代の頃よりも「負けないこと」に重きを置くのが、この世代の知的な戦略となります。
資産の多様化──不動産(REIT)を混ぜる重要性
本書の配分例で注目すべきは、「不動産(REIT)」が
常に一定の割合で組み込まれている点です。
REITとは?
REIT(リート:不動産投資信託)は、オフィスビルやマンション、商業施設などに投資する金融商品です。
多くのビジネスパーソンは「株と債券」だけで満足しがちですが、
マルキールは、不動産は株式や債券とは異なる相関関係を持って動くため、
ポートフォリオ全体の分散効果を高めると説いています。
REITを入れるメリット
1. 分散効果
株式市場が不調でも、不動産市場は好調ということがある
2. インフレ対策
インフレ局面では、現金の価値が目減りする一方で、不動産は価値を維持しやすい
3. 安定収入
REITは賃料収入を分配金として還元するため、定期的なキャッシュフローが得られる
40〜50代のポートフォリオに10%程度のREITを加えることは、
資産に「厚み」を持たせ、不測の事態に強い構造を作るための優れた戦術です。
具体的なファンド例:
- ニッセイ J-REITインデックスファンド
- eMAXIS Slim 国内リートインデックス
- たわらノーロード 国内リート
年に一度の「リバランス」こそが、リターンを最大化させる
比率を決めて投資を始めると、
必ず「値上がりした資産」と「値下がりした資産」が出てきます。
放置すると、当初決めた65:35の比率が、いつの間にか80:20に崩れてしまうこともあります。
ここで重要になるのが「リバランス」(ポートフォリオを元の比率に戻す調整作業)です。
リバランスの基本原則
増えすぎた資産(高くなったもの)を売る → 利益を確定する
減りすぎた資産(安くなったもの)を買う → 安く仕込む
この単純な作業を機械的に行うことで、
結果として「高値で売り、安値で買う」という投資の理想を自動的に実行できます。
リバランスのベストタイミング
マルキールは年1回のリバランスを推奨していますが、
具体的にはいつが良いのでしょうか?
おすすめのタイミング:
- 誕生日 – 覚えやすく、年齢による配分変更も同時にチェックできる
- 年末年始 – 1年の区切りとして自然
- 決算期 – 会社の決算と同じタイミング
臨時リバランスを検討すべき場合:
- 目標比率から±5%以上ズレた場合
- 大きな市場変動(暴落・暴騰)があった場合
ビジネスの進捗管理と同様に、1年に一度、例えば誕生日にポートフォリオをチェックする。この規律こそが、ランダムな市場を歩き抜くための最強の習慣です。
リバランスでよくある失敗
実践する際に陥りがちな失敗例を知っておきましょう。
❌ 失敗1:感情に任せて調整する
「株が下がったから怖い。もっと債券を増やそう」
→ ルールを無視すると、目標配分の意味がなくなります。
暴落時こそ、機械的にリバランスを実行すべきです。
❌ 失敗2:頻繁にリバランスしすぎる
毎月チェックして調整
→ 売買コストと税金で利益が減ります。年1回で十分です。
❌ 失敗3:リバランスを全くしない
10年放置した結果、株式90%に
→ 想定以上のリスクを取ることになり、暴落時に耐えられなくなります。
⭕ 正解:年1回、機械的に、ルール通りに実行する
感情を排除し、淡々と実行する。これがリバランスの極意です。
自分でリバランスを行うための「計算シート」の作り方
理論は分かったけれど、「実際にどう計算すればいいの?」という声をよく聞きます。
ここでは、Excel または Googleスプレッドシートで作れる、具体的な計算シートの作り方を紹介します。
このシートを使えば:
✅ 現在の資産配分が一目で分かる
✅ 目標配分との差が自動計算される
✅ いくら売買すればいいかが分かる
【ステップ1】シートの基本構造を作る
まず、以下のような表を作ります。
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 |
|---|---|---|---|---|
| 資産クラス | 現在評価額 | 現在比率 | 目標比率 | 調整額 |
入力例:
| 資産クラス | 現在評価額 | 現在比率 | 目標比率 | 調整額 |
|---|---|---|---|---|
| 国内株式 | 3,000,000 | 40% | ||
| 外国株式 | 2,000,000 | 30% | ||
| 債券 | 3,000,000 | 30% | ||
| 合計 | 8,000,000 | 100% |
【ステップ2】現在比率の計算式を入れる
C列(現在比率)には以下の式を入れます。
= B2 / $B$5
(※B5は合計金額のセル。$をつけることで固定参照になります)
これで、自動的に現在の資産比率が算出されます。
【ステップ3】目標比率の設定(ライフサイクル式)
D列に目標比率を入力します。
年齢に応じた自動計算式を作る場合:
どこかのセル(例:G1)に年齢を入力します。
年齢: 45
株式比率の計算式(例:G2セル):
= 110 – G1
結果:65%
債券比率(例:G3セル):
= 100% – G2
結果:35%
この数字をD列の目標比率に使います。
40代の例(45歳):
- 国内株式:40%
- 外国株式:25%
- 債券:25%
- REIT:10%
50代の例(55歳):
- 国内株式:30%
- 外国株式:20%
- 債券:35%
- REIT:10%
- 現金:5%
【ステップ4】リバランスの「調整額」計算式
E列(調整額)に次の式を入れます。
= ($B$5 * D2) – B2
意味:
$B$5 * D2:総資産 × 目標比率 = あるべき金額- B2:現在評価額を引く
結果の見方:
- プラス → その金額を買い増し
- マイナス → その金額を売却
これで、「いくら売買すればよいか」が一瞬で分かります。
【ステップ5】リバランス判断の目安を設定する
マルキールは頻繁な売買を推奨していません。
そこで、次のルールを追加すると実践的です。
ルール例:
- 目標比率から±5%以上ズレたら実行
- 年1回のみチェック
ズレ判定式(F列に追加):
= ABS(C2 – D2)
これが 0.05(5%)以上なら「要調整」と表示させます。
条件付き書式を使った表示例:
= IF(F2 >= 0.05, “要調整”, “OK”)
【完成イメージ】
| 資産クラス | 現在評価額 | 現在比率 | 目標比率 | 調整額 | ズレ | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 国内株式 | 3,500,000 | 43.8% | 40% | -300,000 | 3.8% | OK |
| 外国株式 | 2,500,000 | 31.3% | 25% | -505,000 | 6.3% | 要調整 |
| 債券 | 1,500,000 | 18.8% | 25% | +505,000 | 6.2% | 要調整 |
| REIT | 500,000 | 6.3% | 10% | +300,000 | 3.7% | OK |
| 合計 | 8,000,000 | 100% | 100% | 0 |
この例では、外国株式を約50万円売却し、債券を約50万円購入すれば、バランスが整います。
【無料テンプレートのダウンロード】
年齢と資産総額を入力するだけで、自動的に最適配分が出るシートを作りました。
📥 ダウンロードはこちら:
👉Lifecycle_Investment_Rebalance_Template(Googleスプレッドシート)
コピーしてご自由にお使いください。
今日から始める3つのステップ
『ウォール街のランダム・ウォーカー』が教える資産配分の極意をまとめます。
ステップ1:自分の年齢に合った配分を知る
40代: 株式65%、債券20%、REIT 10%、現金5%
50代: 株式50%、債券35%、REIT 10%、現金5%
簡易式: 「110 – 年齢 = 株式比率」
この数字はあくまで目安です。リスク許容度は人それぞれなので、以下の要素も考慮してください:
- 収入の安定性(公務員 vs フリーランス)
- 他の資産の有無(不動産、退職金など)
- 家族構成(扶養家族の有無)
- 性格(心配性 vs 楽観的)
ステップ2:現在の配分をチェックする
今持っている資産を書き出し、現在の比率を計算してみましょう。
チェック項目:
- ✅ 証券口座の残高
- ✅ 銀行預金
- ✅ 個人向け国債
- ✅ 企業型DC(確定拠出年金)
- ✅ iDeCo
- ✅ NISA口座
目標配分と±5%以上ズレていたら、リバランスのタイミングです。
ステップ3:年1回のリバランスを習慣化する
誕生日や年末年始など、決まったタイミングで見直す。
感情に流されず、機械的に実行することが成功の鍵です。
カレンダーに登録しましょう:
- 「毎年〇月〇日:ポートフォリオ見直し」
この習慣があれば、10年後、20年後に大きな差が生まれます。
まとめ:年齢という「尺度」で、最適な資産配分をデザインする
本記事では、『ウォール街のランダム・ウォーカー』が教える資産配分の極意を解説しました。
ライフステージへの適合:
若いうちは株式多め、年齢とともに債券を増やす
40代の黄金比:
株式65%を主軸に、成長と安定を両立させる
50代の守備固め:
株式を約50%に抑え、暴落耐性を高める
真の分散:
REIT(不動産)を加え、インフレや異なる市場環境に備える
規律のリバランス:
年1回のメンテナンスで、リスクを一定に保つ
投資は、理論を知っているだけでは不十分です。
ご自身の現在の年齢とリスク許容度を照らし合わせ、
まずは現在の資産配分がマルキールのモデルとどれほど乖離しているかを
確認することから始めてみてください。
計算シートを使えば、10分で現状分析が完了します。
今日が、あなたの資産運用を「次のステージ」に進める日になることを願っています。
おすすめの書籍
ウォール街のランダム・ウォーカー バートン・マルキール
では、またね~






