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「遺言書は家族への最後のマネジメント|40代から始める相続リスク対策」

「遺言書は家族への最後のマネジメント|40代から始める相続リスク対策」

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「遺言書を書いたのに、かえって家族が揉めてしまった」

同僚からこんな話を聞きました。遺留分を考慮せずに作成したため、
兄弟から遺留分侵害額請求をされ、結局は遺産分割協議が必要になったそうです。
せっかくの遺言書が、トラブルの火種になってしまったのです。

今回は、そうならないための「正しい遺言書の書き方」をお伝えします。

相続を「仕様書のないプロジェクト」にしてはいけない

ビジネスの現場において、仕様書が不透明なプロジェクトが成功することはありません。
相続も全く同じです。遺言書がない相続は、
いわば「意思決定者が不在で、ゴール設定(配分)も不明確なプロジェクト」を、
残された家族に丸投げするようなものです。

特に40〜50代の皆様は、親のサポートと同時に、
自分自身の万が一にも備え始めるべき世代。
遺言書を書くことは、決して「死」の準備ではなく、
残される家族という組織を守り、円滑に運営し続けるための
「究極のリスクマネジメント」です。

ただし、この仕様書を「バグ」のないものにするためには、守るべき鉄則があります。

遺言書の法的効力と「遺留分」という制約

遺言書の最大の特徴は、その法的拘束力です。

遺言書があれば、原則として法定相続分に優先して
「誰に、何を、どれだけ渡すか」を
自由に決められます。
ただし、ここで忘れてはならない制約があります。
それが「遺留分」です。

  • 遺留分とは:
    配偶者や子供などの近親者に認められた、最低限受け取れる相続分の権利

  • 原則:
    法定相続人の権利として、
    法定相続分の法定相続分の1/2(直系尊属のみの場合は1/3)が
    保証されています。

<具体例>
遺産総額:3,000万円
相続人:配偶者と子2人

– 法定相続分:配偶者1,500万円、子各750万円
– 遺留分:配偶者750万円、子各375万円

もし「全財産を長男に」という遺言を残した場合、
配偶者は750万円、
次男は375万円の遺留分侵害額請求が可能です。

どんなに「全財産を長男に」と強く願って書いても、
この遺留分という「不可侵領域」を無視した遺言書は、
後に家族を争わせる火種となってしまいます。

遺留分侵害額請求を防ぐ配分戦略

もし遺言書が特定の誰かに偏りすぎて「遺留分」を侵害していた場合、
他の相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
これは、不足分を「現金」で支払うよう求める強力な権利です。

ビジネスで言えば、後からコンプライアンス違反を指摘され、
キャッシュでの損害賠償を求められるようなものです。

  • リスク:
    手元に現金がない場合、せっかく相続した実家を売却して支払いに
    充てざるを得ないケースもあります。

  • 戦略的対応:
    遺言書を作成する際は、各人の遺留分をあらかじめ計算し、
    「最低限、遺留分相当額は現金や生命保険でカバーする」設計にしましょう。
    あえて「法律のギリギリ」を攻めないことが、最も賢明なリスクヘッジとなります。

遺言書がもたらす手続きの時短効果

遺留分に配慮した「完成度の高い遺言書」があれば、
相続手続きの生産性は劇的に向上します。
最大のベネフィットは、相続人全員の合意が必要な
「遺産分割協議」を完全にスキップできる点です。

これまでの連載で解説した通り、全員の合意を得るには膨大な時間と精神力が必要です。
しかし、有効な遺言書があれば、その指示に従って即座に銀行口座の解約
や不動産の名義変更が可能になります。

多忙なビジネスパーソンにとって、時間は最も貴重な資産です。
「揉めるきっかけを物理的に排除する」ことは、あなたから家族への
最高の「時短ギフト」になるのです。

付言事項で想いを伝える

ロジック(法的配分)を整えたら、
最後に必要なのは「エモーション(感情)」のケアです。
遺言書には「付言(ふげん)事項」として、
法的な指示以外のメッセージを添えることができます。

「なぜ、この配分にしたのか」という理由、そして家族一人ひとりへの感謝。

例えば、
「長男には介護の負担を考え不動産を渡すが、次男には学費の援助を思い出し現金で配慮した。兄弟仲良く助け合ってほしい」
といった一文があるだけで、受け取り側の納得感は180度変わります。

「数字の正しさ(遺留分への配慮)」と「言葉の温かさ(付言事項)」。この両輪が揃って初めて、遺言書は最強のトラブル防止策となります。

【まとめ】遺言書は、家族の未来を確約する「経営計画書」である

本記事では、相続トラブルを未然に防ぐ「遺言書」の真の価値について解説しました。

  • リスク管理:
    家族を泥沼の話し合いから解放し、絆を守る。

  • 法的コンプライアンス:
    「遺留分」を計算に入れ、後日の請求リスクを最小化する。

  • 圧倒的な効率化:
    面倒な遺産分割協議をスキップし、スムーズな承継を実現する。

  • 納得感の醸成:
    「付言事項」で、数字では表せない愛情と意図を伝える。

遺言書は決して「死の準備」ではありません。
あなたが築き上げた資産と、愛する家族を次世代へ繋ぐための
「ラスト・マネジメント」です。
40〜50代の今こそ、まずはご自身の資産を棚卸しし、
家族が笑顔でいられるための「仕様書」を書き始めてみませんか。

【まとめの後に】

<今日からできる第一歩>
1. 自分の財産をリストアップする(不動産、預貯金、保険など)
2. 法定相続人が誰になるか確認する
3. 専門家(弁護士・司法書士・税理士)に相談する

遺言書は、一度書いたら終わりではありません。状況の変化に応じて
見直すことも大切です。まずは、資産の棚卸しから始めてみましょう。

関連記事:
【第1回】相続の全体像(プラス・マイナスの財産)
【第2回】法定相続人の優先順位
【第3回】遺産分割協議の進め方
【第4回】相続税の基礎控除
【第5回】相続放棄の手続き方法
【第6回】不動産相続の3つの分け方
【第7回】小規模宅地等の特例
【第8回】暦年贈与の正しい使い方
→【第9回】遺言書が家族の絆を守る本当の理由

【次回予告】
次回は「相続放棄」について解説します。
絶対やってはいけないことを解説します。

次回もお楽しみに