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相続対策

「うちは普通だから」が一番危ない?相続税の基礎控除という壁を突破する回避戦略

「うちは普通だから」が一番危ない?相続税の基礎控除という壁を突破する回避戦略

シルスプのブログにようこそ

「え、うちも相続税かかるの!?」

会社の同僚(年収800万円の普通のサラリーマン)が
青ざめた顔で税理士の試算結果を見せてくれました。

東京の実家(築40年の古い一軒家)+ 預貯金3,000万円
= 相続税 約200万円

「普通の家庭なのに、なんで…」

その原因は、親が30年前に3,000万円で買った土地が
今では評価額6,000万円になっていたこと。

これ、決して他人事じゃありません。

これまでの連載で、相続は「プラスもマイナスもまるごと引き継ぐこと」、
そして「法定相続人の優先順位」という基本ルールを整理してきました。

次に40〜50代のビジネスパーソンが直面する最も現実的な問いがあります。

「結局、わが家に相続税はかかるのか、かからないのか?」

その答えを左右する「壁」の正体。
それが、今回解説する「基礎控除」です。

相続税は「資産家だけのもの」ではない?現代の基礎控除事情

「相続税なんて、一部の富裕層の話だろう」
——そう考えている40〜50代のビジネスパーソンは少なくありません。

しかし、平成27年(2015年)の税制改正で状況は一変しました。

【改正前後の基礎控除額比較】

■ 改正前(〜平成26年)
5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数

例:相続人3人の場合
→ 8,000万円まで非課税

■ 改正後(平成27年〜)
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例:相続人3人の場合
→ 4,800万円まで非課税

控除額が40%も縮小されたのです。

この改正により、課税対象者は一気に2倍に増加
現在、相続税の申告が必要な人は亡くなった方の約1割(約10万人)に
達しています。

特に都市部に実家がある場合や、
コツコツと貯蓄を重ねてきた親を持つ世帯にとって、
相続税は極めて身近な「コスト」となりました。

基礎控除の計算式:あなたの家は大丈夫?「3,000万円+600万円×人数」の壁

相続税がかかるかどうかを判断するライン、それが「基礎控除額」です。
計算式は非常にシンプルですが、その数字のインパクトは絶大です。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

【パターン別 基礎控除額シミュレーション】

■ケース1:相続人2人(配偶者+子1人)

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
→ 遺産が4,200万円を超えると課税

■ケース2:相続人3人(配偶者+子2人)

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
→ 遺産が4,800万円を超えると課税

■ケース3:相続人4人(配偶者+子3人)

3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円
→ 遺産が5,400万円を超えると課税

【重要】「正味の遺産額」とは?

正味の遺産額 = プラスの財産 – マイナスの財産 – 葬儀費用

プラスの財産:
・不動産(土地・建物)
・預貯金
・株式・投資信託
・生命保険金(非課税枠を超えた部分)
・退職金(非課税枠を超えた部分)

マイナスの財産:
・借入金
・未払税金
・葬儀費用(通常100〜200万円)

一見大きな金額に見えますが、
都内の持ち家(土地・建物)に多少の預貯金があれば、
あっさりと超えてしまうのがこの「壁」の正体です。

地価上昇が招く「隠れ課税」:都市部に実家があるビジネスパーソンのリスク

なぜ今、この基礎控除が「壁」として意識されるのか。
その背景には、近年の不動産価格の上昇があります。

【実例で見る地価上昇の衝撃】

■ケース:世田谷区の実家(土地60坪)

1990年購入時:
土地2,500万円 + 建物1,500万円 = 4,000万円

2024年現在の評価額:
土地6,000万円(路線価ベース) + 建物500万円 = 6,500万円

さらに預貯金2,000万円があれば…
→ 総資産8,500万円 – 基礎控除4,800万円 = 課税対象3,700万円
→ 相続税 約370万円(概算)

親が数十年前に購入した実家。
当時の価格からは想像もつかないほど
土地の評価額(路線価)が上がっているケースが多々あります。

相続税は「購入価格」ではなく「相続税評価額」で計算されるため、
「購入時は3,000万円だったから大丈夫」という認識は危険です。

特に以下のエリアに実家がある方は要注意:

⚠️ 東京23区(特に城南・城西エリア)
⚠️ 横浜・川崎の主要駅周辺
⚠️ 大阪市内
⚠️ 名古屋市内
⚠️ 福岡市内

「うちは普通のサラリーマン家庭だから」という油断が、
申告漏れや予期せぬ納税負担を招く最大の要因となっているのです。

基礎控除内に収めるための「生前対策」:今すぐ検討すべき3つのアクション

基礎控除内に収めるための「生前対策」:今すぐ検討すべき3つのアクション

もし試算の結果、基礎控除を超えそうだと分かったらどうすべきか。
ビジネスパーソンとして取るべき戦略的なアクションは3つです。

【対策1】生命保険の非課税枠を活用する(優先度:★★★★★)

 非課税枠:500万円 × 法定相続人の数

■メリット:
・現金を保険に換えるだけで控除枠を実質的に拡大
・すぐに始められる(親が80歳代でも加入可能な商品あり)
・死亡保険金は受取人固有の財産(遺産分割協議不要)

■デメリット:
・高齢での加入は保険料が高い
・健康状態によっては加入できない

■実例:
相続人3人の場合
→ 500万円 × 3人 = 1,500万円まで非課税
→ 預金1,500万円を終身保険に換えるだけで節税効果

【対策2】暦年贈与の活用(優先度:★★★★☆)

毎年110万円までの贈与は非課税

■メリット:
・10年続ければ1,100万円の資産移転が可能
・贈与税の申告不要(110万円以内なら)

■デメリット:
・相続開始前7年以内の贈与は持ち戻し(加算)対象
・時間がかかる(早めの着手が必須)
・「定期贈与」とみなされないよう注意

■注意点:
毎年同じ時期に同じ金額を贈与すると、
「最初から○○万円を贈与する予定だった」とみなされ、
一括で贈与税が課される可能性があります。

毎年、金額や時期を変える工夫が必要です。

【対策3】小規模宅地等の特例をチェック(優先度:★★★★★)

同居等の条件を満たせば、土地評価を最大80%減額

■適用条件(主なもの):
・被相続人と同居していた親族が相続する
・相続税申告期限まで居住・保有を継続
・限度面積:330㎡(約100坪)まで

■効果:
評価額6,000万円の土地
→ 80%減額で1,200万円に!
→ 4,800万円の節税効果

■注意点:
同居の定義は厳格(住民票だけでなく実態も重要)
二世帯住宅の場合、構造によっては適用外
相続税申告書への記載が必要(自動適用ではない)

【優先順位の考え方】

① まず「小規模宅地等の特例」が使えるか確認
→ 効果が最大なので最優先

② 次に「生命保険」で即効性のある対策
→ 親の年齢・健康状態を確認

③ 時間的余裕があれば「暦年贈与」を開始
→ 最低でも相続の8年前から

これらの対策は「相続が始まってから」では間に合いません。
親が元気なうちに、一度専門家(税理士)に相談することをお勧めします。

まとめ:40〜50代が今すぐ親と「数字」で話すべき理由

相続税の基礎控除は、知っているか知らないかだけで、
数百万円単位の支出差を生む「壁」です。

忙しいビジネスパーソンにとって、親の死を前提とした話は避けたい
ものかもしれません。
しかし、資産の棚卸しを放置することは、将来の自分や家族に不要な
負債を負わせることと同義です。

まずは「お正月の帰省」や「連休の集まり」を利用して、
実家の土地の評価額や預貯金の概算を把握すること
から始めてください。
数字に基づいた現状把握こそが、感情的なトラブルを防ぎ、
家族の資産を守る唯一の手段なのです。

【今週末にやるべきこと】

相続税対策は「情報収集」から始まります。
以下のステップで、まず現状を把握しましょう。

□ ステップ1:法定相続人の数を確認
→ 配偶者+子供は何人?
→ 基礎控除額を計算(3,000万円+600万円×人数)

□ ステップ2:実家の土地評価額を調べる
→ 国税庁「路線価図」で確認可能
→ または固定資産税評価額×1.14で概算

□ ステップ3:親の預貯金・株式を概算
→ 「もし入院したら、どの口座から?」と自然に聞く

□ ステップ4:生命保険の加入状況を確認
→ 既に非課税枠を使っているか?

□ ステップ5:基礎控除を超えそうなら税理士相談を検討
→ 初回相談無料の事務所も多い

【無料で使えるツール】

国税庁「路線価図」
https://www.rosenka.nta.go.jp/
(実家の住所から土地の評価額を調べられる)

国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」
https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl
→ 簡易シミュレーションが可能

これらのツールを使えば、
専門家に相談する前に「わが家は対策が必要か」の
見当がつきます。

【まとめ】相続税の「基礎控除」を知り、賢く資産を守るために

相続税の分かれ道となる「基礎控除」について解説しました。

✓ 基礎控除の壁:「3,000万円+600万円×人数」を超えると課税
✓ 平成27年改正で控除額が40%縮小、課税対象者が2倍に
✓ 都市部の地価上昇により、一般家庭でも「隠れ課税」のリスク
✓ 生前対策:生命保険・暦年贈与・小規模宅地特例の活用

「うちは大丈夫」という根拠のない自信を捨て、
一度客観的な数字でシミュレーションしてみることが、
後悔しない相続への最短距離です。

【今週末、親と話す時の切り出し方】

「お正月のニュースで相続税の話やってたんだけど、
うちって基礎控除超えるのかな?
一度、実家の土地の評価額とか調べてみない?」

このくらいの軽い口調で大丈夫です。

次回は「「遺産分割協議」って何?全員の合意が必要な話し合い」について、具体的な事例を交えて解説します。

関連記事:
【第1回】相続の全体像(プラス・マイナスの財産)
【第2回】法定相続人の優先順位
【第3回】遺産分割協議の進め方

→ 【第5回】相続放棄の手続き方法

【次回予告】
次回は「 相続放棄の手続き方法」についてを解説します。

では、またね~