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「実家をどうするか、もう2年も話し合ってる」
会社の同僚(52歳)が疲れた顔で言いました。
父が亡くなり、残された実家(評価額3,000万円)。
相続人は兄・同僚・妹の3人。
兄:「俺が住むから、実家は俺がもらう」
同僚:「じゃあ、預貯金1,000万円は俺と妹で分ける?」
妹:「不公平!実家3,000万円もあるのに!」
話し合いは平行線。
結局、「とりあえず3人の共有名義に」
しかし3年後、兄が実家を売りたいと言い出したものの、
妹が反対して身動きが取れない状態に…
相続にはよくあることですが、
資産の大半が実家という家庭は少なくありません。
特に40〜50代のビジネスパーソンにとって、
親が住む実家の相続は避けて通れない問題です。
不動産の売却は、時間とお金がかかるので大変。
しかも、「物理的に切れない」という特性が、
兄弟間の亀裂を生む最大の要因なのです。
今日は、実家を賢く「分ける」ための
3つの手法とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
不動産は「物理的に切れない」。相続における不動産問題の特殊性
不動産は「物理的に切れない」。相続における不動産問題の特殊性
相続財産の中で、最もトラブルになりやすいのが「不動産」です。
【知っていますか?】
・相続トラブルの約75%は「不動産」が原因(司法統計)
・遺産5,000万円以下の「普通の家庭」でトラブル多発
・相続財産に占める不動産の割合:平均約40%
現金であれば1円単位で100対0でも50対50でも正確に分けられますが、
実家という不動産はそうはいきません。
「この部屋は兄、このリビングは妹」
と物理的に切り分けることは不可能です。
【不動産相続が揉める3つの理由】
■理由1:評価額が不明確
同じ不動産でも:
・固定資産税評価額:2,000万円
・路線価:2,500万円
・時価(実勢価格):3,000万円
どの数字を使うかで揉める
■理由2:思い入れの違い
長男:「親と同居してた。思い出の家を残したい」
次男:「俺はマンション買ったし、現金が欲しい」
感情vs合理性
■理由3:将来の負担が不透明
・固定資産税(年20万円)は誰が払う?
・リフォーム費用(500万円)は?
・将来売る時の手間は?
特に40〜50代のビジネスパーソンにとって、
親が住む実家は思い入れがある一方で、
今の自分たちの生活拠点とは別にあることが多いため、
「誰が引き継ぐのか」
「いくらで評価するのか」
「維持費は誰が負担するのか」
という問題が深刻化します。
この「分けにくさ」こそが、
兄弟間の亀裂を生む最大の要因なのです。
方法①:現物分割。土地を切り分ける、あるいは特定の人が相続する基本形
方法①:現物分割。
土地を切り分ける、あるいは特定の人が相続する基本形
「現物分割」とは、
遺産そのものをそのままの形で分ける方法です。
不動産の場合、
「長男が実家を、長女が預貯金を相続する」
といった分け方や、
広い土地であれば
「境界線を引いて2つの土地に分筆(ぶんぴつ)する」
ことがこれに当たります。
【パターン1:不動産と預貯金で分ける】
■遺産の内訳
・実家(土地・建物):3,000万円
・預貯金:3,000万円
・合計:6,000万円
■相続人:兄・弟の2人
■分け方
兄:実家3,000万円を相続
弟:預貯金3,000万円を相続
→ それぞれ3,000万円で公平
【パターン2:土地を分筆する】
■遺産の内訳
・広い土地(200坪):4,000万円
・預貯金:2,000万円
・合計:6,000万円
■相続人:兄・弟の2人
■分け方
土地を100坪ずつに分筆
兄:土地(100坪)2,000万円 + 預貯金1,000万円 = 3,000万円
弟:土地(100坪)2,000万円 + 預貯金1,000万円 = 3,000万円
【メリット】
✓ 手続きがシンプルで分かりやすい
✓ 思い入れのある建物を残せる
✓ すぐに決着がつく
【デメリット】
✗ 不動産と預貯金の価値が釣り合わない場合、不公平感が出やすい
例:
・実家:3,000万円
・預貯金:1,000万円
・合計:4,000万円
兄が実家3,000万円、弟が預貯金1,000万円
→ 弟は「不公平だ!」と感じる
✗ 土地を物理的に分ける場合、形や接道状況によって価値が大きく変わる
例:
・Aの土地(角地):評価額が高い
・Bの土地(袋地):評価額が低い
同じ面積でも価値が違う
✗ 分筆には費用がかかる(測量費50万円〜、登記費用など)
【現物分割が向いているケース】
✓ 不動産と預貯金の金額がほぼ同じ
✓ 相続人の数が少ない(2人程度)
✓ 誰が何をもらうか、すでに合意ができている
方法②:代償分割。家をもらう代わりに「現金」で調整するビジネスライクな解決策
方法②:代償分割。
家をもらう代わりに「現金」で調整するビジネスライクな解決策
「家は長男が継いで住み続けてほしい、
でも他の兄弟とも公平に分けたい」
という場合に有効なのが「代償分割」です。
特定の相続人が不動産を相続する代わりに、
他の相続人に対して、
自分の持ち出しで「代償金(現金)」を支払う手法です。
【代償分割の計算シミュレーション】
■遺産の内訳
・実家:3,000万円
・預貯金:1,000万円
・合計:4,000万円
■相続人:兄・弟の2人
(法定相続分:各1/2 = 2,000万円ずつ)
■兄が実家を相続したい場合
兄がもらうもの:
・実家:3,000万円
兄が本来もらえる額:2,000万円
実際にもらう額:3,000万円
差額:1,000万円 → これを弟に支払う
■具体的な流れ
1. 兄が実家3,000万円を相続
2. 兄が弟に代償金1,000万円を支払う
3. 弟は代償金1,000万円 + 預貯金1,000万円 = 2,000万円
結果:
・兄:実家3,000万円 − 代償金1,000万円 = 実質2,000万円
・弟:代償金1,000万円 + 預貯金1,000万円 = 2,000万円
→ 公平に分割完了!
【メリット】
✓ 実家を売却せずに済む
→ 思い出の家を残せる
✓ 公平な分配が可能
→ 現金で調整するので不公平感が少ない
✓ 相続税対策にも使える
→ 小規模宅地等の特例(80%減額)が適用できる可能性
【デメリット】
✗ 相続する本人に、まとまった現金(代償金)を支払う資力が必要
例:
実家5,000万円、預貯金1,000万円、相続人3人の場合
長男が実家を相続すると、
次男・三男にそれぞれ約1,300万円の代償金が必要
→ 長男が2,600万円用意できない場合は不可能
✗ 不動産の評価額(時価なのか路線価なのか)を巡って揉める
・時価(実勢価格):3,000万円
・路線価:2,400万円(時価の80%)
・固定資産税評価額:2,100万円(時価の70%)
どの評価額を使うかで代償金が変わる
✗ 代償金を分割払いにすると、受け取る側が不安
「本当に払ってくれるのか?」
【代償分割が向いているケース】
✓ 誰か1人が実家に住み続けたい
✓ 代償金を支払える資力がある
✓ 小規模宅地等の特例を使いたい
✓ 実家を売りたくない
【注意点】
⚠️ 代償金の資金調達方法
・自己資金
・預貯金の相続分を充てる
・住宅ローンを組む
・生命保険金を使う
事前に資金計画を立てることが必須
⚠️ 不動産の評価額は専門家に依頼
・不動産鑑定士に正式な鑑定を依頼(費用30万円〜)
・または、複数の不動産業者に査定依頼(無料)
兄弟間で合意できる評価額を見つけることが重要
方法③:換価分割。家を売って「現金」にして分ける、最も公平な最終手段
方法③:換価分割
家を売って「現金」にして分ける、最も公平な最終手段
「誰も住む予定がない」
「公平に分けたい」
「相続税の納税資金が必要」
という場合に最も選ばれるのが「換価分割」です。
不動産を売却して現金化し、
その代金を相続人間で分け合います。
【換価分割の流れ】
■STEP1:遺産分割協議で「換価分割」を決定
(全員の合意が必要)
■STEP2:いったん相続人の代表が単独で相続登記
(売却するために必要)
■STEP3:不動産業者に売却依頼
■STEP4:買主が見つかったら売買契約
■STEP5:売却代金を受け取る
■STEP6:売却費用を差し引いた後、相続人で分配
【具体的な計算例】
■遺産の内訳
・実家:売却価格3,000万円
・預貯金:1,000万円
■相続人:兄・弟の2人
■売却にかかる費用
・仲介手数料:3,000万円×3%+6万円 = 約100万円
・測量費:50万円
・登記費用:10万円
・譲渡所得税:約200万円(ケースによる)
・合計:約360万円
■実際の分配
売却代金3,000万円 − 費用360万円 = 2,640万円
兄:
・実家の売却分:1,320万円
・預貯金:500万円
・合計:1,820万円
弟:
・実家の売却分:1,320万円
・預貯金:500万円
・合計:1,820万円
→ 完全に公平!
【メリット】
✓ 1円単位で平等に分けられるため、最も揉めにくい
✓ 納税資金に充てられる
→ 相続税の支払いに困らない
✓ 空き家問題を解決できる
→ 固定資産税・維持費の負担から解放
✓ 誰も損した気分にならない
→ 全員が現金を受け取れる
【デメリット】
✗ 思い出の詰まった家がなくなる
→ 心理的な抵抗感
✗ 売却コストが発生する
・仲介手数料:(売却価格×3%+6万円)×1.1
→ 3,000万円なら約105万円
・譲渡所得税:
→ 利益の約20%(居住用特例使えない場合約40%)
・測量費、登記費用など:数十万円
✗ 売却に時間がかかる
→ 3ヶ月〜1年程度
✗ 希望価格で売れない可能性
→ 市場次第で想定より安くなることも
【換価分割が向いているケース】
✓ 誰も住む予定がない
✓ 相続税の納税資金が必要
✓ 公平に分けたい
✓ 空き家を維持したくない
✓ 兄弟間で金額で揉めたくない
【注意点】
⚠️ 売却前に相続登記が必要
相続登記をしないと売却できません。
2024年4月から相続登記が義務化され、
3年以内に登記しないと10万円の過料。
⚠️ 譲渡所得税に注意
親が住んでいた実家でも、
相続人が住んでいない場合、
「居住用財産の3,000万円特別控除」が
使えない可能性があります。
税理士に相談して節税対策を。
⚠️ 売却のタイミング
相続税の申告期限(10ヶ月)までに
売却できない場合、
いったん相続税を納めてから売却することに。
資金計画をしっかり立てましょう。
【絶対NG】共有名義は「負の遺産」への入り口。避けるべき理由と対策
最後に、絶対に避けてほしいのが
「とりあえず兄弟2人の共有名義にしておく」
という選択です。
その場は丸く収まるように見えますが、
これは将来のトラブルを先送りしているに過ぎません。
【実際にあった恐怖の事例】
■ケース1:Cさん(55歳)の場合
20年前、父の実家を兄弟3人の共有名義に。
当時:
・長男:持分1/3
・Cさん(次男):持分1/3
・三男:持分1/3
10年後、長男が死亡。
長男の持分1/3が、長男の妻と子供2人に相続。
現在の共有者:
・長男の妻:持分1/9
・長男の子A:持分1/9
・長男の子B:持分1/9
・Cさん:持分1/3
・三男:持分1/3
合計5人!
そして三男も高齢化。
三男が亡くなったら、
三男の子供たち(3人)にさらに分散…
→ もはや誰も手を付けられない
「所有者不明土地」の予備軍に😱
■ケース2:Dさん(50歳)の場合
兄弟2人で実家を共有名義に。
Dさん:「実家を売って現金化したい」
兄:「売りたくない。思い出の家だ」
共有名義の場合、
売却には共有者全員の同意が必要。
兄が反対すれば、
Dさんは自分の持分(1/2)すら
勝手に売却できない。
結局:
・固定資産税は2人で負担し続ける(年20万円)
・誰も住んでいない空き家を維持
・10年間で200万円の税金を払い続けた
「あの時、ちゃんと決めておけば…」
【共有名義の3つの恐怖】
■恐怖1:売却・リフォームに全員の同意が必要
共有名義の不動産は、
以下の行為に共有者全員の同意が必要:
・売却
・建て替え
・大規模リフォーム
・賃貸に出す
1人でも反対すれば何もできない。
■恐怖2:時間が経つほど権利関係が複雑化
相続が発生するたびに、
共有者が増えていく:
第1世代:兄弟2人
↓
第2世代:兄弟の子供たち4人
↓
第3世代:孫の世代8人
→ ネズミ算式に増加
■恐怖3:固定資産税・維持費の負担
誰も住んでいなくても:
・固定資産税(年15万〜30万円)
・火災保険(年5万円)
・草刈り・清掃(年10万円)
年間30万円 × 10年 = 300万円の負担😱
ビジネスパーソンであれば、
「出口戦略のない契約」が、いかに危険か理解できるはずです。
多少時間がかかっても、
今の世代で単独名義に落ち着かせるのが、
次世代への責任です。
【共有名義を避けるための3つの対策】
□ 対策1:今すぐ3つの方法のどれかで決着をつける
→ 現物分割・代償分割・換価分割
□ 対策2:どうしても決まらない場合は専門家介入
→ 弁護士・税理士に相談
□ 対策3:期限を切る
→ 「3ヶ月以内に決める」など期限設定
【まとめ】不動産相続を成功させる鍵は「出口戦略」の共有にあり
「不動産」という分けにくい財産を相続する際は、
以下の3つの手法から最適なものを選びましょう。
【3つの分割方法の比較】
| 方法 | 向いているケース | 必要な資金 |
| 現物分割 | 不動産と預貯金の金額がほぼ同じ | 不要 |
| 代償分割 | 実家を残したい・代償金が払える | 必要(大) |
| 換価分割 | 誰も住まない・公平に分けたい | 不要 |
いずれの方法をとるにせよ、
最優先すべきは「共有名義を避けること」です。
「とりあえず共有名義に」は、
将来のトラブルを先送りしているだけ。
権利関係がネズミ算式に複雑化し、
事実上「誰も手を付けられない不動産」になってしまいます。
【今日からできる3つのアクション】
□ アクション1:実家の評価額を確認
→ 固定資産税評価額は「固定資産税納税通知書」に記載
→ または、複数の不動産業者に無料査定依頼
□ アクション2:兄弟で話し合いの場を設定
→ 「3ヶ月以内に決める」など期限を切る
→ 決まらない場合は専門家(弁護士・税理士)介入
□ アクション3:各分割方法のシミュレーション
→ 自分のケースで3つの方法を試算
→ どれが最も現実的か検討
不動産相続は、
単なる遺産の分配ではなく、
家族の歴史をどう整理し、次へ繋げるかの意思決定です。
ビジネスで培った交渉力と決断力を活かし、
家族全員が納得できる「出口」を、
早めに話し合っておくことが大切です。
関連記事:
→ 【第1回】相続の全体像(プラス・マイナスの財産)
→ 【第2回】法定相続人の優先順位
→ 【第3回】遺産分割協議の進め方
→ 【第4回】相続税の基礎控除
→ 【第5回】相続放棄の手続き方法
→【第6回】不動産相続の3つの分け方
【次回予告】
次回は「小規模宅地等の特例」について解説します。
実家の土地評価を最大80%減額できる強力な節税策です。
では、またね~






