シルスプのブログにようこそ
ある日、森の王者ライオンが昼寝をしていると、小さなネズミが体の上を走って
起こしてしまいました。
怒ったライオンはネズミを捕らえますが、ネズミは「いつか必ずお役に立ちます」
と懇願します。ライオンは「お前のような小さな存在が、私の役に立つはずがない」
と笑いながらも、命だけは助けてやりました。
数日後、ライオンは狩人の罠にかかり、身動きが取れません。
そこに現れたのが、あのネズミでした。ネズミは鋭い歯で網を噛み切り、
ライオンを救い出したのです。
イソップ童話「ライオンとネズミ」。
子どもの頃に読んだこの物語を、あなたは単純な「小さくても役に立つことがある」
という教訓として記憶していたかもしれません。
でも、40代、50代になって、組織の中でさまざまな立場を経験してきた今、
この物語はまったく違う意味を持って心に響いてきます。
これは、地位や権力を手にした人が陥りがちな「驕り(おごり)」の物語です。
部長になった、役員になった、経営陣に入った。地位が上がるにつれて、
自分より下の立場の人、影響力が小さく見える人──
そうした存在が、だんだんと視界から消えていく。
ライオンがネズミを「役に立たない小さな存在」と見下したように。
本当にそうでしょうか。そして、その思い込みが、いつかあなた自身を窮地に
陥れることはないでしょうか。
この記事では、「ライオンとネズミ」という古典的な童話を通して、
謙虚さの本質、強者の驕りが招く代償、
そして現代のリーダーシップにおいて謙虚さがなぜ戦略的に重要なのかを考えていきます。
1. ライオンの驕り:「強者の思考」が見落とすもの
ライオンがネズミを見下したのには、単なる体の大きさ以上の理由があります。
そこには、権力や地位を持つ者が必然的に陥る「強者の思考」が隠れています。
「パワーバイアス」が認知を歪める
ライオンは、自分の基準(力、大きさ、速さ)でしか価値を測れませんでした。
ネズミがその基準に当てはまらないから、「価値がない存在」と判断してしまいます。
これは、心理学でいう「パワーバイアス(権力バイアス)」の表れです。
地位や権力は、私たちの認知を歪めます。権力を持つと、他者の視点を理解する能力が
低下し、自分の判断への確信が強まり、「自分は助けを必要としない」という思い込みが
生まれるのです。
現代の組織でも、同じ光景を見かけます。
売上を上げる「花形」部門が、バックオフィスの「サポート」部門を軽く見る。
ベテラン社員が若手の意見を「経験不足」として退ける。
経営層が現場の声を「視野が狭い」として無視する。
強者の思い込み
ライオンの「お前のような小さな存在が、私の役に立つはずがない」という言葉には、
三つの危険な思い込みが含まれています。
価値は目に見える力で決まる(目立たない貢献を見過ごす)
自分より下の立場の者から学ぶことはない(知識や知恵の源泉を限定する)
自分は助けを必要としない(危機に対する備えをしない)
しかし、ライオンが罠にかかったとき、その「小さな存在」だけが救えました。
組織においても、本当に大切な解決策やイノベーションは、
小さく、静かで、見えにくいところから生まれることが多いのです。
2. ネズミの価値:「小さな存在」が持つ本当の力
ネズミがライオンを救えたのは、ライオンが持っていない「弱者の特徴」を
持っていたからです。
小さな体、鋭い歯、狭い場所に入る能力──これらは、罠という特定の状況では、
ライオンの力よりも価値がある唯一の解決策になりました。
組織における「ネズミ」の価値
これは、組織の「多様性」の本質を示しています。
多様性は、性別や年齢だけでなく、
異なる視点、異なるスキル、異なる問題解決のアプローチを
持つ人たちが集まることです。
組織の中の「ネズミ」とは、以下のような存在です。
新人社員:
業界の常識に染まっていないため、「なぜこのやり方なんですか?」と
本質的な疑問を投げかけられる。派遣・契約社員:
複数の会社の経験から、「他社ではこうしていました」と別の選択肢を示せる。現場の窓口担当者:
顧客対応の最前線にいるため、システムやサービスの「使いにくさ」に気づける。
これらの「小さな存在」の価値は、測定しにくく、評価しにくいものです。
しかし、組織が本当に困ったとき、予想外の問題に直面したとき、
この見えにくい価値が組織を救います。
謙虚さ=信頼の貯金
もう一つ、忘れてはならない大切な点があります。
ネズミがライオンを救ったのは、ライオンが以前、命を助けてくれたからです。
謙虚に接すること、小さな存在も尊重すること、見返りを求めずに親切にすること──
これらは、単なる道徳ではなく、
いつか自分が困ったときの「保険」なのです。
ビジネスの世界では、これを「信頼の貯金(社会関係資本)」と呼びます。
もしライオンがネズミを踏みつぶしていたら、罠の中で助けは来なかったでしょう。
あなたの周りには、どんな「ネズミ」がいるでしょうか。
もしかしたら、あなたを救ってくれるのは、今あなたが見過ごしているその人か
もしれません。
3. 謙虚さの戦略的価値:なぜ「謙虚なリーダー」が成果を出すのか
「謙虚さ」は弱さではありません。
むしろ、現代の組織研究は、謙虚なリーダーの方が、より高い成果を生み出していること
を証明しています。
謙虚なリーダーシップの三つの特徴は、組織に戦略的な効果をもたらします。
| 謙虚なリーダーシップの特徴 | 組織にもたらす効果 |
| 自分の限界を認める | 心理的安全性の向上 |
| 他者の強みを認める | 多様な才能の最大限の活用 |
| 学び続ける姿勢を持つ | 継続的な学習と適応力の強化 |
① 心理的安全性の向上
リーダーが「私にもわからないことがある」「あなたの意見を聞きたい」と認めると、
メンバーも失敗や疑問を率直に共有しやすくなります。
Googleが数百のチームを分析した「プロジェクト・アリストテレス」では、高パフォーマンスチームの最大の共通点は「心理的安全性の高さ」でした。
そして、その土台を作るのが、リーダーの謙虚な姿勢なのです。
失敗を恐れないチームこそ、イノベーションを起こします。
② 多様な才能の活用
謙虚なリーダーは、自分がすべてを知っているとは思っていません。
そのため、積極的に周りの知恵を借りようとします。
ライオンが謙虚だったら、「どんなふうに役立てるのか教えてくれ」と
聞いたかもしれません。
例えば、「逆メンター制度」のように、若手社員から新しいデジタルツールや
若い世代の価値観を学ぶ姿勢は、組織全体の知識と経験を最大化します。
③ 継続的な学習と適応力の強化
自分の成功体験に固執する「驕りのあるリーダー」は、環境の変化に対応できません。
かつて業界の王者だったコダックやノキアが没落した背景には、
「我々のやり方が正しい」というトップの驕りと、変化への抵抗がありました。
謙虚なリーダーは、常に新しい情報に対してオープンです。
この「自己否定を恐れない適応力」こそが、変化の激しい現代において、
組織の生存を左右する最も重要な能力なのです。
4. 日常で実践する謙虚さ:「驕り」を防ぐ7つの習慣
地位や権限を持つ中で、驕りを防ぎ、謙虚さを保つにはどうすれば良いでしょうか。
日々の仕事の中で実践できる7つの習慣を紹介します。
【謙虚なリーダーシップを保つための7つの習慣】
肩書きを外す時間を持つ:
趣味やボランティアなど、肩書きが通用しない場で「一人の人間」としての自分を
再認識する。「教えてください」を口癖にする:
若手や現場スタッフに積極的に質問し、彼らの知識や視点を尊重する姿勢を示す。感謝を具体的に伝える:
「ありがとう」だけでなく、
「昨日のあの資料のおかげで、プレゼンがスムーズに進んだよ」と、
相手の貢献を具体的に認める。失敗を隠さず共有する:
「完璧なリーダー」の幻想を捨て、自分の間違いを認め、「そこから何を学んだか」
をセットで伝える。異なる意見を歓迎する:
反論の前に「興味深い視点だね。もう少し詳しく聞かせて」と、
自分の盲点を照らしてくれる光として意見を探求する。定期的に「現場」に戻る:
役員室ではなく、店舗や工場、コールセンターなど現場で起きていることを
自分の目で確認する。意思決定の前に「あなたはどう思う?」と聞く:
結論を出す前に、立場が下の人、普段発言の少ない人に意識的に意見を聞く手間を
かける。
これらの習慣に共通するのは、「自分を特別だと思わない」という姿勢です。
謙虚さは、エレベーターで部下と一緒になったとき、廊下ですれ違った清掃スタッフに
挨拶をするか、会議で若手の意見にどう反応するか、といった
毎日の小さな選択の積み重ねなのです。
まとめ:救われるのは、救った人
「ライオンとネズミ」の物語は、どんなに強く、偉大な存在でも、
いつか必ず助けを必要とするという深い真実を教えてくれます。
謙虚さとは、自分の限界を知り、他者の価値を認め、すべての人を尊重する姿勢です。
これは、道徳的に正しいだけでなく、戦略的に賢い行動です。
心理的安全性を生み、
多様な才能を活かし、
継続的な学習を可能にする。
そして何より、危機のときに助けてくれる人たちとの「信頼の貯金」を育てます。
ライオンは、命を助けたネズミに、命で返してもらいました。
あなたが今日、誰に謙虚に接し、誰の価値を認めるのか。
その小さな選択が、未来のあなたを支える強固なネットワークを作るのです。
森の王者ライオンでさえ、小さなネズミに救われました。
私たちも、謙虚さという知恵を持って、人と接していきたいものです。
【おすすめの一冊】
この記事で紹介したは、
子供向けではなく、大人こそ読むべき人生の教科書です。
では、またね~







