シルスプのブログにようこそ
「来月末で退職します」──。
優秀だと思っていた部下からの突然の申し出に、言葉を失った経験はないでしょうか。
続く退職理由は、
「キャリアアップのため」
「新しいチャレンジがしたい」
といった一般的な内容であることが多いものです。
しかし、人材関連の調査では、表向きの理由とは別に「上司との関係」を
本音として挙げる退職者が少なくないことが分かっています。
では、なぜ部下は本当の理由を言わないのでしょうか。
「言っても変わらない」
「円満に辞めたい」
などの心理が働き、退職届を出す段階ではすでに関係改善の余地が
小さくなっていることが多いのです。
特に40~50代の管理職は、経験に裏打ちされた自負がある一方で、
「自分のマネジメントに問題はない」と考えがちです。
その結果、無意識の思い込みから、部下の本音や変化を見落としてしまう
ことがあります。
人材の離職がもたらす影響は深刻です。
- 採用・育成に多大なコストがかかる
- 業務停滞や士気低下で組織の生産性が下がる
- 管理職本人の評価にも直結する
ただし、状況を変える方法は必ずあります。
部下が辞める本当の理由を理解し、コミュニケーションの盲点に気づき、
今日から改善に取り組めば、関係性は大きく変わります。
部下が辞める本当の理由TOP5
退職面談で語られる「キャリアアップ」などの前向きな理由の裏側には、
言いにくい本音が隠れています。
さまざまな調査から浮かび上がる代表的な理由は次の5つです。
1.上司が話を聞いてくれない(承認の不足)
「話を聞いてもらえない」は、多くの退職者が抱える本音です。
面談の場があっても、上司が落ち着いて話を聞かない、途中で遮る、
反応が薄い──
こうした態度は「自分に関心がない」というメッセージとして伝わります。
承認されない状態が続くと、部下は「必要とされていない」と感じ、
離職を考えるようになります。
2.成長が実感できない(キャリア支援の不足)
「今の環境にいても成長できない」という感覚は、離職理由の大きな要因です。
現代の部下は、明確なフィードバックや将来像の提示を求めます。
「この仕事が自分のキャリアにどうつながるのか」が見えないまま
業務指示だけが続くと、優秀な人材ほど早く環境を変えようとします。
3.評価基準が不透明(公平性への不信感)
評価の根拠が説明されないと、どれだけ公平に評価していても不信感が
生まれます。
- 「なぜその評価なのか」
- 「次に何を改善すればよいのか」
これらが分からない状態が続くと、「努力しても報われない」という
無力感につながります。
4.感情的な叱責や否定(心理的安全性の欠如)
感情に任せた叱責は、部下の心に強いストレスを与えます。
心理的安全性が低い職場では、部下は失敗を隠したり意見を
言わなくなったりし、最終的に離職につながります。
心理的安全性とは:
失敗を恐れず、自分の意見を言える環境のこと。
現代の組織において最も重要な要素の一つです。
5.プライベートへの配慮不足(境界線の侵害)
ワークライフバランスを尊重しない態度──
休日・深夜の連絡、有給を取りにくい雰囲気──は、
離職の引き金になります。
働き方に対する価値観が多様化する中で、私生活への配慮は欠かせない要素
です。
これら5つの理由に共通するのは、制度ではなく「コミュニケーションの質」に
起因している点です。
これら5つに共通するポイント:
給与や福利厚生といった制度ではなく、日々のコミュニケーションの質に
起因している点です。つまり、管理職が今日から変えられる問題なのです。
管理職が見落としがちな5つのコミュニケーション盲点
部下が辞める理由を理解しても、「自分は大丈夫だ」と思っていませんか。
実は、多くの管理職は自分のコミュニケーションの問題点に気づいていません。
盲点1:忙しさが部下を遠ざけている
「今は忙しいから後で」と言い続けると、部下は「相談しても無駄」と
感じ始めます。
上司が意図していなくても、「優先順位が低い」と受け取られることが
あります。
盲点2:正論だけでは人は動かない
論理的に正しくても、部下が「自分にとっての意味」を理解できなければ
行動につながりません。
感情や背景に寄り添った説明が必要です。
改善例:
❌「この仕事は会社にとって重要だ」
⭕「この仕事で君の○○のスキルが活かせる。将来△△につながる」
盲点3:褒め方が抽象的で効果が弱い
「頑張ったね」「すごいね」といった言葉は、一見励ましに見えても
具体性がなく、何が良かったのか伝わりません。
行動ベースの具体的なフィードバックが効果的です。
効果的な褒め方:
「あの提案資料、顧客視点でデータを整理していたのが素晴らしかった」
のように、具体的な行動を指摘する。
盲点4:無意識の比較が部下を傷つける
「Aさんはもうできているのに」「俺が君の年齢の時は…」──
他者や過去の自分との比較は、部下を深く傷つけます。
改善策:
比較するなら「先月の君」と「今月の君」を比べる。
「先月より提案の質が上がっているね」
盲点5:報・連・相を求めながら、受け入れる環境がない
部下が報告や相談をためらう背景には、「否定される」「怒られる」などの
不安があります。
チェックポイント:
- 報告を受けたとき、まず「ありがとう」と言っていますか?
- 悪いニュースほど、早く知れて良かったと伝えていますか?
これらの盲点の共通点:
すべて「良かれと思って」行っている行動だということ。
だからこそ自分では気づきにくく、改善が必要なのです。
部下が辞めないチームを作る実践的コミュニケーション戦略
盲点に気づいたら、次は具体的な改善です。
ここでは、今日から始められる5つの実践戦略をご紹介します。
戦略1:週15分の「聞く時間」を確保する
どんなに忙しくても、週に15分、部下の話を聞く時間を確保してください。
実践のポイント:
- スケジュールに「聖域」として固定する
- この時間は業務報告ではなく「部下のための時間」
- スマホ・PCは閉じて100%集中する
- アドバイスを急がず、まず最後まで聞く
効果:
部下は「自分は大切にされている」と感じ、小さな問題を早期に把握できる。
戦略2:成長の可視化で未来を見せる
日々の業務では成長を実感しにくいものです。
月に一度、具体的な成果や改善点を整理し、部下と共有しましょう。
実践方法:
- 「今月の成長ポイント」を具体的に伝える
- 「成長マップ」を作成(今の位置→半年後の目標→必要なスキル)
- 定期的に見直して進捗を確認
効果:
「今ここにいて、次はここを目指している」という明確な道筋が見える。
戦略3:評価の「なぜ」を丁寧に説明する
評価は結果だけでなく、その根拠の説明が欠かせません。
説明すべき3つの要素:
- なぜその評価になったのか
- どの行動がプラスに働いたのか
- 次に何を改善すれば評価が上がるのか
注意点:
評価面談は「通告の場」ではなく「対話の場」。
部下の意見も聞き、認識のギャップがあればその場で調整する。
戦略4:感情をコントロールして伝える
注意や指摘をする場面では、感情が乗ると相手の受け取り方が大きく変わります。
6秒ルール:
怒りのピークは6秒間。感情的になりそうになったら、
6秒間深呼吸して待つ。
伝え方のコツ:
❌「君のせいで全体が遅れた」(感情)
⭕「納期が3日遅れた結果、次の工程に影響が出ている」(事実)
- そして「次回はどうすれば防げるか、一緒に考えよう」(建設的)
戦略5:「任せる勇気」で自律性を育てる
任せることは「放置すること」ではありません。
正しい任せ方:
- 目的と期待する成果を明確に伝える
- 進め方は部下に委ねる
- 困ったときのサポート体制を整える
- 基本的には部下の判断を信頼する
開始の言葉例:
「この仕事、君に任せたい。進め方は君のやり方で構わない。
困ったことがあれば、いつでも相談してくれ」
効果:
自分で考える経験が成長につながり、「信頼されている」という実感を与える。
実践のコツ:
すべてを一度に完璧にやる必要はありません。
1つか2つ、できそうなものから試してみてください。
小さな変化が、大きな改善につながります。
関係がこじれたときの修復法
部下との関係がぎくしゃくしてしまったと感じたときは、
早めに対話の機会をつくることが重要です。
退職サインを見逃さない
以下のような変化に気づいたら、早めに対応しましょう。
注意すべきサイン:
- 以前より発言が減った
- 会議で意見を言わなくなった
- 相談が少なくなった
- 有給休暇を頻繁に取り始めた
- 服装や髪型が変わった(転職活動の可能性)
対応方法:
すぐに退職を疑うのではなく、
「最近どう?」
「何か困っていることはない?」
と軽い会話から状態を探る。
関係がこじれたときの対話の始め方
話し合いの場では、まず上司自身がこれまでの対応を振り返る姿勢を
示すことが大切です。
効果的な切り出し方:
❌「最近、君の態度が変わったね」(部下を責める)
⭕「最近、私の伝え方が良くなかった部分があったかもしれない」(自分の問題として)
環境づくり:
- 会議室ではなく、カフェやリラックスできる場所
- 業務の話から入らず、雑談から始める
- 横に並んで座る(対面より心理的距離が近い)
誠実な謝意と改善の意思を伝える
部下が感じていた不満や違和感が明らかになったら、それを否定せず
受け止めることが大切です。
謝罪のポイント:
- 具体的な行動に言及する
「先日の件、言い方がきつかった。申し訳ない」
- 言い訳をしない
- 改善の具体策を示す
「今後は、まず君の話を最後まで聞いてから意見を言うようにする」
重要:
謝罪だけでは不十分。「これから具体的にどう変わるのか」を示すことで、
信頼回復の道が開けます。
それでも退職が決まった場合も誠実に向き合う
退職を選ぶ結果になったとしても、最後まで丁寧にサポートする姿勢は、
長期的な信頼につながります。
誠実な対応例:
「君がここを辞めるのは残念だけど、君のキャリアにとって最善の選択なら
応援したい。退職までの期間、できる限りのサポートをするから、
遠慮なく言ってほしい」
長期的視点:
- 最後まで誠実に対応することで、将来のビジネスパートナーになる可能性がある
- 「あの上司は最後まで誠実だった」という記憶は、長く残る
- 残されたチームメンバーも、あなたの対応を見ている
退職から学ぶ
部下の退職を止められなかったとき、その経験を無駄にしてはいけません。
実践すべきこと:
- 退職後に率直なフィードバックを求める
「退職面談では言いにくかったことがあれば、
今なら教えてもらえないか」
- 残されたチームメンバーへのケアを忘れない
- 学んだことを次の改善に活かす
覚えておくべきこと:
関係の修復は簡単ではありませんが、最後まで誠実に向き合う姿勢が、
あなた自身の成長とチーム全体の信頼につながります。
まとめ
部下が辞める理由の多くは、給与や福利厚生ではなく、
日々のコミュニケーションの積み重ねにあります。
盲点に気づき、小さくても具体的な改善を続けることで、
チームの関係性は必ず良い方向へ変わります。
💡今日から始められる3つのアクション
盲点に気づき、小さくても具体的な改善を続けることで、
チームの関係性は必ず良い方向へ変わります。
- 今週中に、各部下と15分の1on1を予定に追加する
- 次の会話では、相手の話を遮らず最後まで聞くことを意識する
- 部下の最近の良い行動を1つ見つけ、具体的にフィードバックする
最後に
20年以上のキャリアで培ってきた経験は、決して無駄ではありません。
その経験を「教える」ために使うのではなく、
「部下を理解する」ために使う──
この転換が、部下の定着率を高め、チームの生産性を向上させ、
管理職としてのあなたの価値を最大化します。
部下を失ってから後悔するのではなく、今日から行動を変えませんか。
あなたの小さな変化が、チームの未来を大きく変える第一歩になります。
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では、またね~







